旧佐々木家住宅とは?|岩手に残る「南部の曲がり家」の代表格
岩手県盛岡市にある旧佐々木家住宅は、江戸時代後期に建てられた「南部の曲がり家(まがりや)」の貴重な遺構です。「曲がり家」とは、L字型に折れ曲がった構造を持つ民家形式で、住居と馬屋が一体化した農家特有の暮らしの知恵が詰まった伝統建築です。
この旧佐々木家住宅は、南部藩時代に栄えた農村文化を今に伝える重要な建築物として、国の重要文化財に指定されています。広々とした茅葺き屋根と重厚な木組み、そして当時の生活様式が再現された展示空間が、訪れる人々に岩手の歴史と暮らしを静かに語りかけてきます。
歴史|江戸時代の農民文化を今に伝える建築
旧佐々木家住宅は、18世紀後半(江戸時代中期)に建てられたとされ、盛岡藩(南部藩)支配下の農村における典型的な中農層の家屋です。所在地は旧都南村(現・盛岡市)で、現在は盛岡市指定史跡として一般公開されています。
この住宅は、生活空間(母屋)と馬屋がL字型に連結されており、寒冷な東北地方の気候に対応する合理的な構造となっています。馬は農作業や運搬に欠かせない存在であり、家族の一員として同じ屋根の下で暮らす文化が形になった建築形式です。
1996年には国の重要文化財に指定され、保存修復を経て、一般見学が可能な形で公開されています。
見どころ|曲がり家の構造美と農村の生活空間
1. 美しい茅葺き屋根とL字構造
まず目を引くのは、幅広く、低く構えた茅葺き屋根です。全体がL字型に曲がっており、母屋と馬屋が一体化した独特の外観を成しています。屋根は定期的に葺き替えが行われており、当時の工法を忠実に再現しています。
2. 馬屋と共に暮らす生活の知恵
内部に入ると、馬屋(うまや)と土間、居室がすべてつながっている構造がよく分かります。馬の吐く息で室内が暖まるため、冬場でも一定の暖かさが保たれたとされます。人と馬が共存していた暮らしぶりを実感できる貴重な空間です。
3. 昔の生活用品の展示
建物内部には、当時使われていた農具・炊事用具・家具などが展示されており、江戸~明治期の農村生活を学ぶことができます。特に土間のかまどや囲炉裏、木製の脱穀機などは、実際の暮らしの息遣いが感じられる見応えある展示です。
4. 解説パネル・ボランティアガイド
展示室内には詳しい解説パネルや模型が設置されており、建築や生活文化について学ぶことができます。予約制でボランティアガイドの案内も可能なため、さらに深く理解したい方にはおすすめです。
周辺観光地|盛岡南部の文化と自然を巡る旅へ
旧佐々木家住宅のあるエリアは、盛岡市のやや南側に位置しており、観光とあわせて郊外の自然や文化を満喫できます。
- 盛岡手づくり村(車で約5分)
南部鉄器や染物などの伝統工芸体験ができる観光施設。 - 盛岡市動物公園ZOOMO(車で約10分)
自然豊かな動物園で、ファミリーに人気。 - 盛岡城跡公園(岩手公園)・櫻山神社(車で約20分)
市街地に戻って歴史散策も可能。 - つなぎ温泉(車で約30分)
日帰り入浴も可能な岩手を代表する温泉地。観光の疲れを癒せます。
アクセス方法|盛岡市郊外で車利用が便利
所在地:岩手県盛岡市下厨川字中居開35-16(旧都南村エリア)
- 電車・バス利用
JR盛岡駅から岩手県交通バス「つなぎ温泉行き」などに乗車、「手づくり村前」下車、徒歩10分。 - 車利用
東北自動車道「盛岡IC」より約15分。無料駐車場あり(普通車用完備)。 - 自転車・徒歩
盛岡駅からの徒歩は困難。公共交通または車・タクシー推奨。
注意点|見学マナーと季節ごとの変化に注意
- 内部見学は靴を脱ぐ必要あり。靴下の着用推奨。
- 冬季は積雪により敷地内が滑りやすくなるため、滑り止め付きの靴を推奨。
- 見学時は、展示物には触れないこと。
- ガイド希望は事前予約が望ましい。イベント開催日程も確認を。
- 夏場は虫が多いため、虫除け対策を推奨。
まとめ|南部曲がり家に見る、岩手の暮らしと知恵
旧佐々木家住宅は、岩手に根づいた農村文化と住まいの工夫を今に伝える貴重な建築遺産です。L字型の構造、馬と共に暮らす生活、そして自然と共生する知恵が凝縮されたこの曲がり家は、ただの建築物ではなく、歴史と人の営みを体験できる生きた資料といえるでしょう。
盛岡を訪れる際は、ぜひ市街地の喧騒から少し離れて、この南部曲がり家の静けさと温もりに触れてみてください。昔ながらの東北の暮らしが、あなたの旅に深い印象を与えてくれるはずです。