北海道えりも町に位置する百人浜海岸(ひゃくにんはまかいがん)は、襟裳岬のすぐ西側に広がる、全長約7キロにも及ぶ壮大な砂浜です。太平洋の荒波と風がつくり上げた美しい海岸線は、訪れる者に静けさと雄大な自然の力強さを同時に感じさせてくれます。

旅の目的地として、近年再注目されつつあるこの海岸。観光客でにぎわうスポットとは一線を画し、手つかずの自然と静かな時間を求める人にこそおすすめしたい場所です。


百人浜海岸とは|観光地概要

百人浜海岸は、北海道日高地方南端のえりも町に位置し、襟裳岬から西へ続く太平洋沿岸に広がるロングビーチです。「百人浜」という名前は、江戸時代に漂着した船の乗組員百人がこの浜で命を落としたという伝説に由来しています。

砂浜と草原が混ざり合う独特の景観で、海岸線の向こうには日高山脈が連なり、晴れた日には海と山の両方を一望できる絶景スポット。散策やピクニック、キャンプにも人気があり、特に夕暮れ時には空と海が赤く染まる幻想的な景色を楽しむことができます。


歴史|名前に宿る哀しみと祈り

百人浜という名は、江戸時代に起きた遭難事件に由来しています。蝦夷地(現在の北海道)を訪れていた船がえりも沖で遭難し、多くの乗組員がこの浜に打ち上げられたと伝えられています。彼らを悼む意味を込めて「百人浜」と名づけられ、地元ではその霊を慰める石碑も建立されており、静かに手を合わせる人の姿も見られます。

また、戦後には砂防林や防風林の整備が進められ、強風と塩害で荒れた地を緑に戻す地域の取り組みも行われてきました。そうした背景が、現在の穏やかで美しい浜の風景に繋がっているのです。


見どころ

1. 夕日の絶景スポット

太平洋に沈む夕日は、百人浜海岸最大の見どころ。波音とともに空が赤く染まり、訪れた人の心を癒します。天候が良ければ、日高山脈のシルエットとのコントラストも絶妙です。

2. 百人浜キャンプ場

夏場はオートキャンプが楽しめる施設が整備されており、トイレや炊事場も完備。広々とした草地にテントを張れば、風の音と潮騒をBGMに自然と一体になれます。

3. 海岸の自然観察

浜辺には海藻や漂流物が打ち上げられ、夏にはハマナスなどの野草も観察できます。地元小学生の環境学習にも活用される場所で、自然学習の場としてもおすすめです。

4. 風と波の音に包まれる遊歩道

海岸沿いに続く静かな遊歩道を歩くと、周囲の音が風と波だけになる瞬間があります。都会の喧騒を忘れ、心を“無”にする贅沢な時間が流れます。


周辺観光地・温泉スポット

襟裳岬(車で約10分)

北海道の最南端ともいえる観光名所で、荒波が岩を叩くダイナミックな風景と「風の館」からのアザラシ観察が人気。

▶︎ 詳細記事:襟裳岬・風の館 特集

えりも岬温泉(車で約5分)

ナトリウム-塩化物強塩泉で、冷え性や疲労回復に効能あり。観光の締めくくりにぴったりの日帰り入浴施設。

アポイ岳(様似町/車で約40分)

高山植物の宝庫として知られるジオパーク。登山道が整備され、初心者にも登りやすい山です。


アクセス方法

■ 自家用車

  • 新千歳空港から約3時間半(約210km)
  • 帯広市から約2時間半(約150km)
  • 襟裳岬から車で約10分

■ 公共交通機関

  • 都市間バス(道南バス):札幌〜様似〜えりも町方面行きに乗車し、「百人浜」または「えりも町」下車
  • 鉄道(JR):日高本線(※2024年現在、災害により鵡川以南はバス代行運行)

※現地ではレンタカー利用を推奨。百人浜キャンプ場にも駐車場あり。


注意点

  • 風対策必須:特に春〜秋でも風が非常に強いため、帽子や軽量の防寒具は必携です。
  • 携帯電波が弱い場所あり:一部エリアでは圏外となるため、地図や緊急連絡先を事前に準備しておくと安心です。
  • 熊の目撃情報:稀にヒグマの目撃例があるため、散策時には注意看板の確認と、鈴の携帯をおすすめします。

まとめ|大自然に抱かれた“静の聖地”で過ごす特別な時間

百人浜海岸は、派手さこそないものの、北海道らしい壮大な自然と静けさを心ゆくまで味わえる数少ない観光地のひとつです。歴史を感じさせる地名の由来、夕日が彩る大海原、そして風と波の音が心を整えてくれる癒しの空間。
“何もしない”ことが最高の贅沢になる、そんな旅の時間をぜひ味わってみてください。

▶︎ えりも町観光情報(公式サイト)
https://www.town.erimo.lg.jp/kankou/