北海道の最南東端、日高山脈がそのまま海へと沈み込むように続く雄大な風景。その最果てにある「襟裳岬(えりもみさき)」は、四季を通じて強風が吹きつける過酷な自然環境にありながらも、訪れる人々を魅了し続ける絶景の地です。
そんな襟裳岬にある観光拠点施設が、今回ご紹介する「風の館(かぜのやかた)」。
海・風・アザラシ・岬の地形――そのすべてを五感で感じることのできる、まさに“風の体験型ミュージアム”です。
風の館とは?|観光地概要
風の館は、北海道えりも町が運営する観光・学習施設で、襟裳岬の先端に位置しています。施設内からは岬の灯台と太平洋を一望でき、年平均風速10mを超える「風の町・えりも」の気候をリアルに体感できる「強風体験室」や、海に暮らす野生のアザラシを観察できる展望スペースなど、他にはないユニークな展示が魅力です。
また、ジオラマや映像を通して、日高山脈の成り立ちや襟裳の自然環境、生物多様性について学ぶこともできます。雨天時や寒冷時の観光にも最適な施設として、家族連れや修学旅行生にも人気があります。
歴史と誕生の背景
風の館は、えりも町が地域振興・観光促進の一環として1997年に開設。かつてこの地は「開発より保存を」と自然保護運動が盛んに行われた場所でもあります。特に、昭和40年代の「緑化事業」では、強風と潮風によって森林が失われた襟裳岬に、地元住民やボランティアが長年をかけて緑を取り戻す活動が行われました。
その自然回復の象徴として建てられたのが風の館であり、施設の中ではこうした取り組みの歴史についても学ぶことができます。単なる観光施設にとどまらず、「人と自然の共生」というテーマが随所に表れているのです。
見どころ
1. 強風体験室
実際に襟裳岬の風を再現する体験コーナー。風速25mの世界を体感でき、その凄まじさに驚かされます。風に立ち向かう感覚は、まるで自然との対話のよう。
2. アザラシウォッチングギャラリー
屋内から野生のゴマフアザラシを観察できる望遠鏡付きの展望台。3月〜7月にかけて岩礁に休む姿がよく見られます。
3. 風のジオラマ・映像シアター
日高山脈が海へ続く「海蝕崖」や動植物の生態系などを、ダイナミックな映像と模型で分かりやすく解説。
4. 襟裳岬灯台と岬の絶景
館の裏手から遊歩道を進めば、真っ白な灯台と断崖の風景が眼前に。荒波が砕ける音と、風の音が重なり合う幻想的な空間です。
周辺観光地・温泉
■ 百人浜(ひゃくにんはま)海岸
襟裳岬の西に広がる長大な砂浜。夕暮れの時間帯には、赤く染まる海と空が幻想的です。夏は釣りや海岸散策にも人気。
■ アポイ岳(様似町)
ユネスコ世界ジオパークに認定された標高810mの山。高山植物の宝庫で、登山道が整備され初心者でも楽しめます。
■ 様似温泉アポイ山荘
登山帰りや襟裳観光の帰路に立ち寄れる天然温泉。ナトリウム-塩化物泉で、疲労回復や保温効果に優れています。
■ えりも岬温泉
風の館から車で5分ほどの距離にある日帰り入浴施設。地元の方にも親しまれており、旅の疲れを癒すのに最適です。
アクセス方法
■ 自家用車
- 札幌から約4時間(約240km)
- 新千歳空港から約3時間30分(約200km)
- 帯広市内から約2時間30分(約150km)
■ 公共交通機関
- JR日高本線:苫小牧〜様似(※災害により一部区間運休中)
- 都市間バス(道南バス):札幌駅から様似またはえりも岬行きが運行中
- バス下車後、タクシーまたは徒歩で風の館へ(※襟裳岬中心部から徒歩約5分)
注意点
- 強風に注意:年中風が強く、特に冬季は吹雪や視界不良に要注意。観光のベストシーズンは5月〜10月。
- 服装の準備を:夏でも体感温度が低く、ウインドブレーカーや防寒具が必須です。
- 施設営業時間
- 開館時間:9:00〜17:00(最終入館 16:30)
- 定休日:12月1日〜3月31日(冬季休館)
- 入館料:大人300円、小・中学生200円(2025年5月時点)
まとめ:風が語り、海が響く、“知る”と“感じる”が融合する場所
「風の館」は、北海道襟裳岬の魅力を、視覚・聴覚・体感を通して存分に味わえる体験型施設です。厳しい自然条件の中でも息づく生命の力、そして人間と自然が共存してきた歴史に触れることで、旅の価値がぐっと深まります。
北海道旅行の王道ルートとは少し外れる場所かもしれませんが、それでも訪れる価値は十二分にあります。
“風が心を洗う”――そんな言葉がぴったりの場所、「風の館」。ぜひ一度、あなた自身の五感で体験してみてください。
▶︎ 風の館(公式ページ)
https://www.town.erimo.lg.jp/kankou/kazenoyakata/
▶︎ えりも町観光情報(公式サイト)
https://www.town.erimo.lg.jp/kankou/