岩手県北部・洋野町の高原地帯、久慈平岳(標高706m)の麓に湧く「大谷温泉(おおやおんせん)」は、県内屈指のラドン濃度を誇る天然温泉として知られ、昔ながらの湯治文化が息づく静かな名湯です。無色透明で無臭の冷鉱泉は、じんわりと身体を温め、疲労回復や慢性疾患に効果があると評判。地元客のみならず、県内外から多くの湯治客が訪れる隠れた人気スポットです。
■ 施設概要|洋野町唯一のラドン天然温泉
大谷温泉は、「単純弱放射能冷鉱泉(低張性中性冷鉱泉)」という泉質を持ち、ラドン含有量は9.8×10⁻¹⁰キュリー/kg(27.8マッヘ)と、県内トップクラス。体にやさしく穏やかな作用を持ちながらも、確かな温浴効果があるのが特徴です。
- 所在地:岩手県九戸郡洋野町大野
- 営業時間:8:00〜21:00(12月31日は18:00まで/1月1日は休業)
- 料金:
大人450円/小学生100円/未就学児70円
回数券(11回分+サービス券):3,500円 - 個室休憩(入浴料込み):
1名1,000円(8:00〜17:00)※冬季は暖房費200円追加 - 駐車場:完備
- 備品:シャンプー・ボディーソープは設置なし(販売あり)
※源泉かけ流しではなく、加温・循環ろ過を行っています。
■ 泉質と効能|じんわりと温まり老廃物を流す名湯
● 源泉情報
- 泉温:10.3℃(冷鉱泉のため加温)
- pH値:6.2(中性)
- 湧出量:毎分50リットル(自然湧出)
- 泉質:単純弱放射能冷鉱泉(低張性中性冷鉱泉)
- 特徴:無色透明・無味無臭・肌への刺激が少なく長湯に最適
● 効能(浴用)
- 新陳代謝促進・ホルモン分泌調整・老廃物の排出作用
- 【具体的適応症】:痛風、動脈硬化症、高血圧症、胆石症、慢性皮膚病、リウマチ、筋肉痛、神経痛、慢性胆のう炎 など
ラドン温泉特有のじわじわとした温まり感と持続性の高い保温力が魅力で、「湯上がりに3日間体がポカポカする」と語られるほどです。
■ 歴史|鉄の町から湯治の町へ
大谷温泉の起源は、18世紀の大谷鉄山(おおやてつざん)にまでさかのぼります。天明二年(1782年)に開山されたこの鉄山は、日本二大鉄山の一つ「大野六鉄山」の一角をなしており、刀剣の材料となる良質な鉄を産出していました。
当時、鉱山労働者たちが負った火傷や眼病を癒やす湧き水として、大谷の湯が利用されていたと伝えられています。
昭和9年、「種市ラヂウム鉱泉合名会社」として公衆浴場を開業し、戦争で負傷した兵士の湯治場として広く利用されました。昭和49年に「大谷温泉」として再スタートし、現在に至るまで、地域に根差した湯治文化が大切に守られています。
■ アクセス方法|久慈市街から車で約30分の好立地
【車利用】
- JR八戸線「久慈駅」から車で約30分(国道395号→県道29号経由)
- 三陸沿岸道路「種市IC」から約40分
- 駐車場完備(普通車多数対応)
【公共交通機関】
- 最寄のバス停や鉄道駅からはアクセス困難なため、車利用推奨
- レンタカー利用、または地元宿泊施設を拠点にタクシー手配を推奨
※冬季は積雪・凍結による路面状況に注意。
■ 日帰り利用の利便性|地元客も通う温泉銭湯
大谷温泉は、宿泊施設を併設せず、純粋な日帰り入浴施設として運営されています。清掃の行き届いた脱衣場と、シンプルな浴場ながらも、効能を重視した“通の温泉”として愛されています。
- 浴槽:1つ(適温・加温済)
- 設備:シャワー、脱衣所、ロッカー(無料)
- 備品販売:シャンプー・タオルなどを受付で販売
個室休憩スペース(有料)もあるため、半日湯治や静養に最適な環境です。
■ 注意点|快適に過ごすためのアドバイス
- 湯治用として通う常連客が多く、静けさを好む方に最適
- シャンプー類は設置なし。持参推奨または現地購入
- 源泉は冷鉱泉であり、加温・循環ろ過式で衛生面も安心
- 山間部に位置するため、冬季は暖房費が必要(個室休憩時)
- 年始(1月1日)は休業。大晦日(12月31日)は短縮営業
■ まとめ|ラドンの力と高原の静けさに癒やされる温泉
大谷温泉は、華美な装飾や観光設備こそないものの、本物の効能と歴史に裏打ちされた湯治場として、静かに高原にたたずんでいます。日帰り入浴で心と体を芯から温めるもよし、個室でゆったりと過ごすもよし。温泉通をも唸らせる「実力派の湯」を、ぜひその肌で体感してください。
久慈・洋野エリアを訪れる際には、“効能重視派”にこそ勧めたい名湯です。