観光地概要

秋田県秋田市にある「秋田市立赤れんが郷土館(あきたしりつあかれんがきょうどかん)」は、明治期の重厚な赤レンガ建築を活かした歴史資料館で、秋田の近代化の象徴として今も市民と観光客に親しまれています。もともとは旧秋田銀行本店(1912年建築)として使用されていた建物で、国の重要文化財にも指定されている貴重な建築物です。

館内では、秋田の自然・風土・芸術・経済の発展をテーマに、多彩な展示が行われています。なかでも、秋田を代表する洋画家・平野政吉や藤田嗣治(レオナール・フジタ)に関するコレクションは国内外から高い評価を受けています。また、建築そのものも見応えがあり、ステンドグラスや天井装飾、重厚な金庫室など、当時の銀行建築の意匠美を今に伝えています。

2025年11月現在、開館時間は午前9時30分から午後4時30分まで(竿燈まつり期間中は午後7時まで延長)、休館日は年末年始(12月29日〜1月3日)および展示替え期間(不定期)です。観覧料は310円(団体240円)、他の市立施設との共通観覧券は370円(団体290円)、年間パスポートは770円と非常にリーズナブルです。

秋田市中心部にあり、千秋公園や秋田県立美術館などにも徒歩圏。文化と芸術が融合する“秋田の知の拠点”として、多くの来館者を魅了しています。


歴史

秋田市立赤れんが郷土館の建物は、1912年(明治45年)に旧秋田銀行本店として竣工しました。設計を手がけたのは、長野宇平治(ながのうへいじ)。彼は日本銀行本店(辰野金吾設計)の監督補佐を務めた建築家で、辰野式建築の流れを汲む“明治洋風建築”の巨匠として知られています。

建築様式はネオ・ルネッサンス様式。レンガ造り二階建ての堅牢な外観に、花崗岩や漆喰、銅板屋根を組み合わせたデザインは、明治期の近代建築技術と美意識の結晶です。装飾的なアーチ窓、白い石の帯状装飾、そして左右対称のバランスが見事で、まるでヨーロッパの重厚な館を思わせます。

銀行としての役目を果たしたのち、1973年(昭和48年)に秋田銀行が新本店に移転。翌年には秋田市に寄贈され、保存修復を経て1981年(昭和56年)に「秋田市立赤れんが郷土館」として開館しました。以降、秋田の歴史・民俗・文化を伝える資料館として市民に親しまれ、1998年には国の重要文化財に指定されました。


見どころ

1. 建築美 ― 明治のモダンが息づく赤レンガ建築

まず注目すべきは、建物そのものの美しさ。赤レンガの外壁は一枚一枚手焼きで作られ、秋田の厳しい風雪にも耐える堅牢な造り。正面のアーチ状玄関や尖塔(せんとう)はヨーロッパ建築の影響を色濃く受けています。

内部に入ると、天井の装飾模様、ステンドグラス、金庫室の巨大な鉄扉などがそのまま保存されており、まるで明治時代の銀行にタイムスリップしたような感覚に。特に、金庫室の扉は当時の最新鋭技術で造られたもので、今もその重厚感を放っています。

また、館内では建築の歴史や施工当時の写真・図面も展示されており、近代建築ファンにはたまらない空間です。


2. 常設展示 ― 秋田の自然・文化・芸術を体感

赤れんが郷土館の展示は、「自然・文化・芸術」の3つのテーマで構成されています。

  • 自然コーナーでは、秋田の四季の移り変わりや風土、動植物の多様性をパネルや標本で紹介。
  • 文化コーナーでは、秋田の伝統工芸や郷土芸能を取り上げ、竿燈まつり・西馬音内盆踊りなど秋田を代表する行事を映像と資料で学べます。
  • 芸術コーナーでは、秋田出身の芸術家の作品を展示。特に平野政吉コレクションの中から選ばれた藤田嗣治の関連資料は貴重です。

展示替えは定期的に行われ、訪れるたびに新しい発見があります。


3. 特別展示・企画展 ― 秋田の過去と今をつなぐテーマ展示

年間を通じて、季節や地域の特色をテーマにした特別展・企画展が開催されます。
過去には「秋田の商業と金融史」「秋田の女性とくらし」「明治建築と近代都市の形成」など、地元の歴史を深掘りする内容が多く、県内外から研究者も訪れます。

また、竿燈まつりの時期(8月3日〜6日)には夜間延長(〜19:00)を実施。ライトアップされた赤レンガ建築が夜空に浮かび上がり、幻想的な雰囲気に包まれます。


4. 写真映えスポット ― 赤レンガのフォトジェニックな空間

外観はもちろん、館内も撮影スポットとして人気。とくに午後の日差しが差し込む時間帯には、ステンドグラスの光が床に反射して幻想的な彩りを生み出します。
赤レンガの外壁を背景に記念撮影するカップルや旅行者も多く、フォトジェニックな建築美を堪能できます。


周辺観光地

千秋公園(徒歩約5分)

秋田藩佐竹氏の居城跡。春は桜、秋は紅葉の名所として知られ、散策にぴったりのスポットです。

秋田県立美術館(徒歩約7分)

藤田嗣治の大壁画《秋田の行事》を展示する現代的な美術館。赤れんが郷土館とあわせて訪れると、秋田の芸術文化をより深く楽しめます。

秋田市民市場(徒歩約10分)

新鮮な魚介類や秋田名物が並ぶ市民の台所。旅の途中での食事やおみやげ探しに最適です。

エリアなかいち(徒歩約8分)

ショッピングやカフェ、劇場が集まる複合施設。観光と一緒に街歩きを楽しめます。


アクセス方法

  • 所在地:秋田県秋田市大町3丁目3-21
  • 公共交通機関:JR秋田駅から徒歩約15分、または秋田中央交通バス「赤れんが郷土館前」下車すぐ
  • 車でのアクセス:秋田自動車道「秋田中央IC」から約15分
  • 駐車場:あり(周辺に市営駐車場・提携駐車場あり)

注意点

  • 館内は一部撮影禁止エリアがあります。展示物の撮影を希望する場合は、受付で確認を。
  • 建物内には階段が多いため、車椅子利用の場合はスタッフが案内してくれます。
  • 冬季は路面凍結や降雪があるため、滑りにくい靴での来館がおすすめです。

まとめ

秋田市立赤れんが郷土館は、明治期の建築美と秋田の文化を融合させた、まさに“時を超える郷土の記憶”です。重厚な赤レンガの外壁と、館内に漂う歴史の息づかいは、訪れる人を静かな感動へと誘います。

秋田の経済発展の象徴であった銀行建築が、今では市民と旅人の知識と感性を育む場所へと姿を変えました。
歴史好きはもちろん、建築や芸術に関心のある人にもぜひ訪れてほしいスポットです。

美しい外観、豊かな展示、そして文化の香りに満ちた空間――秋田を旅するなら、「赤れんが郷土館」は外せません。