観光地概要

秋田県秋田市にある「秋田県立美術館(Akita Museum of Art)」は、世界的画家・**藤田嗣治(レオナール・フジタ)**の作品を中心に、秋田ゆかりの芸術・文化を発信する県立の美術館です。2013年に現在の地に新築オープンしたこの美術館は、世界的建築家・安藤忠雄による設計で、建物そのものが“芸術作品”といえるほどの美しさを誇ります。

館内では、フジタの代表作《秋田の行事》をはじめ、秋田の風土や人々を描いた絵画・彫刻・写真など、多様な展示を行っています。さらに、建築の魅力を活かした開放的な空間や、水庭を望むカフェも人気で、芸術鑑賞とリラックスを同時に楽しめるスポットです。

2025年11月時点での開館時間は午前10時~午後6時(チケット販売は午後5時30分まで)。竿燈まつり期間中などは開館時間を延長する場合があります。アクセスも秋田駅から徒歩圏内と便利で、観光客・アートファン・家族連れまで幅広い層が訪れる秋田市屈指の文化施設です。


歴史

秋田県立美術館のルーツは、1975年に開館した「秋田県立近代美術館」にあります。当時から秋田ゆかりの美術作品を収集し、藤田嗣治や平野政吉などのコレクションを展示してきました。

藤田嗣治(1886–1968)は、フランスで活躍した日本人洋画家でありながら、秋田に深い縁を持つ人物です。彼は秋田の実業家・平野政吉の支援を受け、1937年に巨大壁画《秋田の行事》を完成させました。この作品は秋田の四季折々の行事や人々の暮らしを描いた幅約20メートル、高さ約3.6メートルの大作で、藤田芸術の集大成ともいわれています。

その後、旧県立近代美術館の老朽化に伴い、2013年8月、現在の**中通二丁目(秋田市エリアなかいち)**に新館をオープン。設計を担当した安藤忠雄は、光と水、自然をテーマにしたミニマルなデザインで、藤田嗣治の世界観と調和する空間を創出しました。現在は、秋田の芸術文化の発信拠点として、年間を通してさまざまな企画展や教育プログラムを開催しています。


見どころ

1. 藤田嗣治の傑作《秋田の行事》

秋田県立美術館の最大の見どころは、**藤田嗣治の大壁画《秋田の行事》**です。幅20.5メートル・高さ3.65メートルという圧倒的なスケールの作品は、1年の四季を通じた秋田の風俗を描いたもので、画面左から春夏秋冬が順に展開されます。

竿燈まつり、秋田犬、雪まつり、農作業、郷土芸能など、秋田の人々の暮らしが生き生きと表現されており、藤田独特の柔らかい線と淡い色彩が織りなす幻想的な世界観に圧倒されます。

展示室は作品のスケールに合わせた吹き抜け構造で、自然光が柔らかく差し込み、時間帯によって作品の見え方が変化するのも魅力のひとつ。秋田県立美術館を訪れるなら、この一室で少なくとも30分はじっくりと作品世界に浸りたいところです。


2. 建築そのものが芸術 ― 安藤忠雄の空間設計

建物の設計を手がけたのは、世界的建築家・安藤忠雄。彼の特徴であるコンクリート打ちっぱなしの壁と、直線と光の演出が見事に融合しています。

館内は三角形を基調とした独特の構造を持ち、中心には大きな吹き抜け階段が配置されています。この階段は建物の象徴的存在であり、上階へと向かうときの高揚感を演出。階段の途中から眺める「水庭」と「空の光」は、訪れた人に深い印象を残します。

1階の大きなガラス窓越しに見える「水庭」は、時間や天候によって表情を変え、建物の内外を優しくつなぐ存在です。安藤建築ならではの“静寂の美”を体感できる空間は、建築ファンにも人気です。


3. 企画展・特別展 ― 国内外の名画と出会う

常設展示に加えて、年間を通して多彩な企画展・特別展が開催されます。これまでにはモネ、ピカソ、ゴッホなど西洋美術の名作展から、現代アートや写真展、秋田ゆかりの作家展まで幅広いジャンルが登場。

また、地域との連携も積極的で、秋田公立美術大学や県内高校との共同展覧会も開催されています。訪問前には公式サイトで開催スケジュールを確認しておくのがおすすめです。


4. ミュージアムカフェ「光風」 ― 水庭を眺めながらくつろぐ時間

美術館1階のカフェ「光風(こうふう)」は、静かに流れる水庭を眺めながらゆったりと過ごせる癒しの空間。地元食材を使ったランチプレートやスイーツ、オリジナルブレンドコーヒーなどが味わえます。

特に人気なのが「秋田りんごジュース」と「比内地鶏のスープランチ」。展覧会を堪能した後に立ち寄れば、芸術と自然を感じながら心豊かなひとときを過ごせます。


5. ミュージアムショップ ― アートの余韻をおみやげに

ショップでは、藤田嗣治の作品をモチーフにしたポストカードやクリアファイル、安藤忠雄建築のデザイングッズなどが販売されています。秋田県の伝統工芸品や地元作家のクラフト雑貨も並び、アートな旅のおみやげ探しに最適です。


周辺観光地

千秋公園(徒歩約5分)

秋田藩主・佐竹氏の居城跡で、春には桜、秋には紅葉が美しい名所。展望台からは秋田市街地を一望できます。

秋田市立赤れんが郷土館(徒歩約7分)

明治期の銀行建築を活かした歴史資料館。赤レンガ造りの外観が美しく、秋田の文化と産業の発展を知ることができます。

エリアなかいち(徒歩1分)

ショッピング、カフェ、シアターなどが集まる複合施設。観光の合間の食事や休憩にも便利です。

ねぶり流し館(徒歩約10分)

秋田の伝統行事「竿燈まつり」を体感できる展示館。実際に竿燈体験も可能です。


アクセス方法

  • 所在地:秋田県秋田市中通一丁目4-2(エリアなかいち内)
  • 公共交通機関:JR秋田駅から徒歩約10分。
  • 車でのアクセス:秋田自動車道「秋田中央IC」から約15分。
  • 駐車場:提携駐車場あり(有料・館内利用で割引あり)。

注意点

  • 館内は一部撮影禁止エリアがあります。作品保護のためフラッシュ撮影は不可です。
  • 展覧会により観覧料が異なる場合があるため、公式サイトで最新情報を確認してください。
  • 館内は全面禁煙。水庭周辺での飲食も制限されています。
  • 冬季は積雪により外部通路が滑りやすくなるため、歩行時は注意が必要です。

まとめ

「秋田県立美術館」は、藤田嗣治の傑作《秋田の行事》を中心に、秋田の自然・文化・芸術を総合的に体験できる場所です。安藤忠雄の建築と藤田の芸術が響き合う空間は、まさに“現代の美と歴史の融合”。

建築の静けさの中に流れる時間、光と水が織りなす空間、そして芸術家たちの息づかい――そのすべてが訪れる人を包み込みます。

秋田駅から徒歩圏内というアクセスの良さも魅力で、観光の中心拠点としても最適。アート好きはもちろん、建築や写真撮影を楽しむ人にもおすすめです。

秋田を訪れるなら、静寂と美が調和する「秋田県立美術館」で、心に残る芸術体験をぜひ。