観光地概要

秋田県秋田市の中心部に位置する「千秋公園(せんしゅうこう)」は、かつての秋田藩主・佐竹氏の居城「久保田城(くぼたじょう)」の跡地に整備された公園です。緑豊かな丘陵地に、堀や石垣、櫓門(やぐらもん)などが今も残り、歴史と自然が調和した市民憩いの名所となっています。

園内は四季折々の花々で彩られ、春の桜、初夏のツツジ、秋の紅葉、冬の雪景色と、訪れるたびに異なる表情を見せるのが魅力です。特に春には約800本の桜が咲き誇り、秋田市随一の花見スポットとして多くの観光客で賑わいます。

また、園内には「久保田城御隅櫓(おすみやぐら)」や「表門」「佐竹史料館」など、歴史的建造物や展示施設が点在。加えて、秋田犬ステーションや茶室・宣庵(せんあん)などもあり、散策だけでなく学びや体験も楽しめる観光スポットとして人気です。

2025年11月時点では、入園料は無料。御隅櫓や史料館は有料ですが、公園内の散策は自由に楽しむことができます。秋田駅から徒歩10分というアクセスの良さも魅力で、地元の人々にも観光客にも愛され続けている秋田市の象徴的な名所です。


歴史

千秋公園の前身である「久保田城」は、1602年(慶長7年)に秋田藩主・佐竹義宣(さたけよしのぶ)によって築かれました。佐竹氏はもともと常陸国(現在の茨城県)を拠点とする大名でしたが、関ヶ原の戦いの後に徳川家康の命で秋田へ転封。その際に新しい城として築かれたのが久保田城です。

久保田城は、石垣をほとんど用いず、土塁と堀を中心にした構造が特徴。雪国・秋田の気候に合わせた合理的な設計で、質実剛健な北国の城郭として知られています。天守閣は存在せず、本丸の角に「御隅櫓」と呼ばれる櫓(やぐら)が設けられ、藩政の中心として機能しました。

明治維新後、廃城令によって久保田城は廃止され、城跡は「千秋公園」として整備。名称の「千秋」は、佐竹氏の居城であった常陸国・太田城(千秋城)にちなんで命名されました。現在では秋田県の史跡指定地となり、秋田市民にとって歴史と自然を象徴する場所として親しまれています。


見どころ

1. 久保田城御隅櫓 ― 城のシンボルが語る秋田の歴史

千秋公園のシンボルといえば、復元された「久保田城御隅櫓(おすみやぐら)」です。1990年に再建された三層三階建ての木造建築で、館内は展示室として一般公開されています。

館内では、佐竹氏の歴史や城下町秋田の発展を紹介するパネル・模型展示のほか、最上階の展望室からは秋田市街や日本海、出羽山地の山並みまで一望できます。特に夕暮れ時の眺めは圧巻で、写真撮影スポットとしても人気です。

入館料は大人100円、高校生以下は無料。気軽に立ち寄れるのも魅力です。


2. 佐竹史料館 ― 秋田藩主の足跡をたどる

御隅櫓の近くにある「佐竹史料館」では、秋田藩主・佐竹氏に関する貴重な資料を展示しています。甲冑、武具、古文書、書画などが多数収蔵され、佐竹氏が秋田の地でどのように文化を築いてきたかを知ることができます。

館内には、佐竹義宣公の肖像画や藩政時代の城下絵図、当時の生活を再現した模型展示もあり、歴史好きにはたまらないスポットです。


3. 四季の自然 ― 桜・ツツジ・紅葉の絶景

千秋公園は季節ごとに異なる魅力を楽しめる自然の宝庫です。

  • 春(4月中旬~5月上旬):ソメイヨシノを中心に約800本の桜が咲き誇り、秋田さくらまつりが開催されます。夜間にはライトアップも行われ、幻想的な雰囲気に。
  • 初夏(5月下旬~6月):ツツジやアジサイが咲き、緑の中に鮮やかな色彩が映えます。
  • 秋(10月下旬~11月上旬):紅葉が園内全体を染め、赤や黄金のグラデーションが美しく、散策に最適な時期。
  • 冬(12月~2月):雪化粧した久保田城跡が静けさをまとい、趣ある風景が広がります。

特に秋は紅葉の名所として知られ、石垣や堀に映る紅葉が訪れる人々の心を癒します。


4. 茶室・宣庵 ― 和の心を感じるひととき

園内の「宣庵(せんあん)」は、茶道体験ができる本格的な茶室です。抹茶と和菓子のセット(有料)を楽しみながら、庭園の風情に浸ることができます。春には桜、秋には紅葉を眺めながら一服する贅沢な時間を味わえます。


5. 秋田犬ステーション ― 秋田の象徴に会える

園内入口付近には、秋田犬と触れ合える「秋田犬ステーション」があります。秋田犬保存会が運営し、愛らしい秋田犬たちが日替わりで登場。観光客との記念撮影も可能で、国内外から多くの観光客が訪れています。


6. 久保田城表門 ― 歴史の面影を残す重厚な門

園の南東側には、秋田藩時代の主要な出入口「久保田城表門」が復元されています。かつて大名や武士たちが往来した門で、黒塗りの板壁と白壁のコントラストが印象的。歴史散策のスタート地点としておすすめです。


周辺観光地

秋田県立美術館(徒歩約5分)

藤田嗣治の名作《秋田の行事》を展示。安藤忠雄設計の建築美と水庭の調和が魅力です。

秋田市立赤れんが郷土館(徒歩約8分)

明治時代の赤レンガ建築を活かした歴史資料館。重厚な建物とステンドグラスが見どころ。

エリアなかいち(徒歩約5分)

ショッピング・カフェ・劇場などが揃う複合施設。観光後の休憩や食事にも最適です。

秋田駅前エリア(徒歩約10分)

お土産店や飲食店が多く、比内地鶏料理や稲庭うどんなど秋田グルメも楽しめます。


アクセス方法

  • 所在地:秋田県秋田市千秋公園1-1
  • 公共交通機関:JR秋田駅西口から徒歩約10分
  • 車でのアクセス:秋田自動車道「秋田中央IC」から約15分
  • 駐車場:周辺に市営駐車場・有料駐車場あり

注意点

  • 冬季は園内の坂道が凍結しやすいため、滑りにくい靴での来園がおすすめです。
  • 春・秋の観光シーズンは混雑するため、早朝の訪問が快適です。
  • 夜間のライトアップ期間は足元が暗い箇所もあるため、歩行には注意を。
  • 公園内は自然が豊かで鳥やリスも見られますが、野生動物には近づかないようにしましょう。

まとめ

千秋公園は、秋田市の中心にありながら自然と歴史が共存する貴重な空間です。かつての久保田城の面影を残しつつ、四季の花々や紅葉が彩る景観は、まさに“秋田の心のふるさと”。

春は桜、秋は紅葉、そして冬は雪景色――どの季節に訪れても絵になる美しさがあり、歴史散策・自然観賞・文化体験を一度に楽しむことができます。

アクセスも良く、秋田県立美術館や赤れんが郷土館など周辺観光地とも合わせて巡れば、秋田市観光をより深く味わえるでしょう。

2025年秋、秋田の歴史と自然を感じたいなら、「千秋公園」を訪れてみてください。悠久の時が息づく城跡で、心に残る秋田の風景に出会えるはずです。