観光地概要
秋田県男鹿市脇本に位置する「脇本城跡(わきもとじょうあと)」は、標高約100メートルの丘陵地に築かれた中世の山城跡で、戦国時代にこの地を支配した安東氏の居城として知られています。日本海や寒風山、男鹿の町並みを一望できる絶好のロケーションにあり、現在は国の史跡にも指定され、秋田県を代表する歴史観光スポットのひとつです。
広大な郭(くるわ)群、巧妙に配置された土塁や空堀など、戦国時代の防御構造を今に伝える貴重な遺構が残されており、2017年には「続日本100名城(No.109)」にも選定されました。
春には桜、秋には紅葉と、四季を通じて美しい自然と歴史の融合が楽しめるスポットとして人気を集めています。
歴史
脇本城の起源は14世紀後半にさかのぼるとされ、安東氏(のちの秋田氏)によって築かれたと伝えられています。安東氏はもともと出羽北部一帯を支配した豪族で、交易を通じて財を成した一族です。男鹿半島は日本海の要衝として栄え、北前船の寄港地としても重要な役割を担っていました。
戦国時代、安東氏は南部氏や最上氏との抗争の中で勢力を拡大。16世紀後半には安東愛季(ちかすえ)の時代に脇本城が大規模に改修され、安東氏の本拠として最盛期を迎えました。愛季は外交や交易にも長け、朝鮮やロシアとの交流も行っていたとされます。
しかし、豊臣秀吉の全国統一後、安東氏は湯沢方面へ移封となり、脇本城はその役割を終えました。以後、城は廃城となり、江戸時代には城跡一帯が農地化。現在では発掘調査によって、当時の城郭構造が少しずつ明らかになっています。
見どころ
1. 天空の城跡 ― 絶景と歴史を一望
脇本城跡の最大の魅力は、なんといっても山頂からの眺望です。城跡の主郭(本丸)からは、日本海の水平線や寒風山、そして男鹿半島の街並みを一望できます。晴れた日には遠く白神山地まで見渡せることもあり、その雄大な景色は「天空の名城」と称されるほど。
また、夕暮れ時には日本海に沈む夕日が幻想的で、写真撮影スポットとしても人気です。
2. 発掘で甦った中世の城郭構造
城跡には本丸・二の丸・三の丸と呼ばれる郭群が連なり、空堀や土塁、虎口(こぐち/出入口)などの遺構が良好に保存されています。発掘調査によって、瓦や陶磁器、鉄器などの生活遺物が多数発見され、当時の城の規模や生活の豊かさがうかがえます。
特に、本丸と二の丸を隔てる「大堀切」は必見。人の背丈をはるかに超える深さの溝が残り、戦国時代の防御構造の工夫を肌で感じることができます。
3. 続日本100名城スタンプとビジターセンター
脇本城跡は「続日本100名城(No.109)」の認定地であり、城好きの間では聖地的存在です。スタンプはふもとにある「脇本城跡ビジターセンター」で押すことができます。館内では、安東氏の歴史や城の構造を紹介するパネル展示、発掘品のレプリカなども公開されており、見学前に訪れると理解が深まります。
4. 四季を彩る自然美
春には城跡一帯に桜が咲き誇り、ピンク色の花が歴史ある土塁をやさしく包みます。夏は青々とした草木が広がり、秋には紅葉が山を染め、冬は雪化粧の中に静けさが漂う。どの季節も趣があり、訪れるたびに違った風景を楽しめます。
5. ドローン撮影スポットとしても人気
広大な敷地と高台の立地から、ドローンによる空撮映えも抜群。眼下に広がる日本海と城郭跡のコントラストは、まるで戦国絵巻の一場面のようです。男鹿市では観光目的での撮影利用も比較的自由に行えますが、マナーを守って楽しむことが大切です。
周辺観光地
寒風山(車で約15分)
360度のパノラマ展望が魅力の山。リフトもあり、男鹿半島全体を見渡せます。春から秋にかけて多くの観光客が訪れる人気スポットです。
男鹿水族館GAO(車で約30分)
秋田を代表する水族館で、ホッキョクグマ「豪太」などが見られます。家族連れにもおすすめ。
なまはげ館(車で約40分)
男鹿の伝統文化「なまはげ」をテーマにした博物館。実際の面や衣装の展示、体験コーナーも充実しています。
道の駅おが オガーレ(車で約10分)
地元産の海産物や野菜、男鹿グルメが集まる人気の道の駅。ドライブ休憩にも最適です。
アクセス方法
- 所在地:秋田県男鹿市脇本富永字城ノ下
- 車でのアクセス:秋田自動車道「昭和男鹿半島IC」から約40分
- 公共交通機関:JR男鹿線「脇本駅」から徒歩約30分(登り坂あり)またはタクシー利用で約5分
- 駐車場:あり(無料・20台程度)
注意点
- 城跡までは舗装された登山道が整備されていますが、一部急な坂道や未舗装の箇所もあるため、歩きやすい靴での訪問がおすすめです。
- 夏季は虫が多いため、虫よけスプレーを持参すると安心です。
- 風が強い日には帽子や荷物が飛ばされないよう注意が必要です。
- ビジターセンターの開館日・時間は季節により変更があるため、訪問前に男鹿市観光協会の公式サイトを確認しましょう。
まとめ
脇本城跡は、男鹿半島の雄大な自然の中に息づく戦国時代の遺構。安東氏の栄華と男鹿の地勢が生んだ“天空の名城”として、歴史と絶景の両方を味わえる場所です。
城好き・歴史ファンはもちろん、写真やハイキングを楽しむ方にもおすすめのスポット。
風と海の音に包まれながら、かつてこの地に立った武将たちの息吹を感じてみてはいかがでしょうか。