北海道・大雪山系のふもと、東川町の山奥にひっそりと佇む「天人峡温泉(てんにんきょうおんせん)」。断崖絶壁と原生林に囲まれたこの地は、まさに“神々の静けさ”を感じさせる秘湯です。観光地化されすぎない落ち着いた雰囲気と、良質な天然温泉に魅了される人々が全国から訪れています。

本記事では、天人峡温泉の温泉地概要、歴史、泉質と効能、日帰り温泉施設、周辺観光地、アクセス方法、注意点を網羅的にご紹介します。秘境の湯に惹かれる方、北海道のディープな自然を体感したい方にとって、必読のガイドです。


温泉地概要|峡谷と原生林が包み込む秘湯の温泉街

天人峡温泉は、北海道東川町の大雪山国立公園内にある温泉地で、標高約630mの山あいに位置します。柱状節理の岩壁や深い森に囲まれた一帯は、人の手が加わっていないような原始的な自然美が広がり、まさに“秘湯”の名にふさわしいロケーション。

温泉街は小規模ながら、自然と静けさ、そして泉質の良さに重点を置いた宿が点在しており、ゆったりと心と体を癒したい人に最適な場所です。


歴史|明治の発見から文人に愛された“文学の湯”

天人峡温泉の歴史は、明治末期にさかのぼります。地元の猟師が渓谷内で湯煙を見つけたことをきっかけに源泉が発見され、以後登山者や林業従事者、湯治客などに利用されてきました。

大正〜昭和にかけては、画家や作家などの文人墨客が好んで滞在したことから、“文学と芸術の温泉地”としても知られるようになります。現在もその面影を残すように、商業的な喧騒から離れた落ち着いた雰囲気が保たれています。


泉質と効能|源泉かけ流しで体の芯まで温まる名湯

天人峡温泉の湯は、自然湧出の豊富な源泉を活かした温泉として知られています。施設によっては源泉かけ流しを採用しており、湯の鮮度と効能の高さが魅力です。

■ 泉質と特徴:

  • 泉質名:ナトリウム-硫酸塩・塩化物泉(弱アルカリ性・低張性高温泉)
  • 泉温:35〜80℃(源泉による)
  • 性状:わずかに白濁、硫黄の香りを感じる場合あり

■ 主な効能:

  • 神経痛、関節痛、筋肉痛、疲労回復、冷え性
  • 慢性皮膚病、婦人病、慢性消化器病、切り傷ややけど
  • 健康増進、糖尿病の補助療法としても人気

※湯上がり後のポカポカ感が長く続くのが特長で、冷え性に悩む方には特におすすめです。


日帰り温泉施設|自然と温泉を気軽に楽しむ

天人峡温泉では、日帰り入浴を受け入れている施設もあり、登山や滝巡りの帰りに気軽に立ち寄れるのが魅力です。源泉かけ流しや自然露天風呂を提供する宿も多く、温泉そのものの魅力を味わいたい方に最適です。

御やど しきしま荘(旧・天人閣)

  • 天人峡温泉の中心にある老舗宿。リニューアルされ、和モダンな雰囲気の浴場でくつろげます。露天風呂では、紅葉や雪景色の絶景が楽しめます。
  • 入浴時間:12:00〜15:00(最終受付14:00)
  • 料金:大人1,000円、小学生500円、未就学児無料
  • 泉質:ナトリウム-硫酸塩・塩化物泉(源泉かけ流し)
    ☆御やど しきしま荘の特集記事はこちら

● 足湯「天女の湯」

  • 温泉街の中心部にある公共足湯施設。無料で利用でき、観光の合間の休憩スポットとしても人気。
  • 料金:無料
  • 時間:日中常時利用可能(冬季は積雪に注意)
  • 泉質:源泉かけ流しの温泉をそのまま利用

周辺観光地|天人峡ならではの絶景と自然を満喫

● 羽衣の滝(日本の滝百選)

天人峡温泉の奥に位置する落差約270mの名瀑。名前の由来は、流れ落ちる様子が天女の羽衣のように見えることから。遊歩道からアクセス可能ですが、2024年現在、一部区間が落石により通行制限中のため最新情報を要確認

● 大雪山旭岳(車で約30分)

北海道最高峰(標高2,291m)。旭岳ロープウェイで中腹まで一気にアクセスでき、高山植物・紅葉・雪景色など、四季折々の絶景が楽しめます。

● 旭岳温泉郷

天人峡温泉とセットで訪れることの多いもう一つの温泉地。異なる泉質や宿泊施設を比較して温泉巡りを楽しむのもおすすめ。


アクセス方法|旭川市から1時間〜、意外と便利な秘湯

■ 公共交通機関:

  • JR旭川駅 → 道北バス「いで湯号(東川線)」で約1時間40分(季節運行)
  • 旭川空港から車またはタクシーで約40分

※公共交通は運行本数が限られるため、レンタカー利用が安心です。

■ 自家用車・レンタカー:

  • 旭川市街から:約1時間20分
  • 旭川空港から:約40分
  • 札幌から:約3時間(道央道 → 旭川鷹栖IC経由)
  • 無料駐車場あり(宿泊・日帰り共用)

注意点|秘湯ならではの心得を忘れずに

  • 積雪期の道路状況に注意(11月〜4月はスタッドレス必須)
  • 携帯電波がつながりにくい場所もあり
  • 羽衣の滝遊歩道は安全情報を事前確認
  • ヒグマ出没情報に注意(登山・散策にはクマ鈴持参がおすすめ)

まとめ|自然と静寂に抱かれる“本物の湯”がここにある

天人峡温泉は、北海道の秘湯を代表する存在です。喧騒から離れた静かな環境の中、良質な天然温泉と自然の美が五感に語りかけてくれる――それが天人峡の魅力です。観光客が多く訪れる温泉地とは異なる、“本物の湯”をじっくり味わう時間を、ぜひこの地で体験してみてください。


📌 参考リンク