観光地概要

国指定史跡「払田柵跡(ほったのさくあと)」は、秋田県大仙市に位置する東北地方最大級の古代城柵遺跡です。奈良・平安時代に朝廷が蝦夷(えみし)支配の拠点として築いた城柵(じょうさく)のひとつで、約720メートル四方に及ぶ巨大な区画と四重の城柵構造を持つことが特徴です。

現在は「払田柵総合案内所」や復元された正門・外柵が整備され、往時の威容を体感できる歴史公園として人気を集めています。春の新緑、秋の紅葉、冬の雪景など、四季折々の風景とともに古代ロマンを感じられるスポットです。

2025年11月現在も、東北の古代史ファンや家族連れの観光客、そして写真愛好家にとって注目の史跡となっており、入場無料で誰でも自由に見学することができます。

歴史

払田柵は、8世紀から9世紀にかけて律令国家が東北地方の支配を強化するために築いた城柵のひとつです。正確な築造時期は不明ですが、平安時代初期(9世紀初頭)に設けられたと考えられています。

「日本紀略」や「類聚国史」などの史料には直接の記述がないため、長らく謎に包まれていましたが、20世紀以降の発掘調査によって、その規模や構造が明らかになりました。払田柵は、秋田城や多賀城と並ぶ東北古代城柵の中でも特に大規模なものとされています。

1978年(昭和53年)から本格的な発掘が始まり、堀や柵、建物跡、道路遺構などが次々に発見されました。これにより、当時の政庁や倉庫群、さらには祭祀に関する建物の存在が確認され、古代の行政・軍事拠点であると同時に、宗教的儀礼も行われていた複合施設であったことが分かっています。

1980年(昭和55年)に国の史跡に指定され、現在は大仙市によって公園整備が進められ、外柵南門・正殿・築地塀の一部が復元され、往時の姿を現代に伝えています。

見どころ

復元された南大門と外柵

払田柵のシンボルともいえる「南大門」は、朱塗りの巨大な門が再現されたもので、訪れる人を古代の世界へと誘います。木製の太い柱や白壁の築地塀が続き、朝廷の威厳を象徴する壮麗な空間が広がります。
門の両側には外柵が延び、約3メートル間隔で立てられた丸太が壮観。古代の防御・政治拠点のスケールを実感できます。

正殿跡と政庁エリア

敷地内には、中心となる「正殿」や「政庁」跡があり、建物の基壇や柱跡が整然と残っています。ここでは当時の政治・儀式が執り行われていたと考えられ、発掘成果に基づく説明看板も充実。訪問者は古代官人たちの営みを想像しながら見学できます。

払田柵総合案内所

入口付近にある「払田柵総合案内所」では、発掘調査で出土した遺物や復元模型、映像展示が行われています。柵の構造や築造技術、当時の人々の生活様式などを学べるほか、ガイドによる解説も受けられます(無料)。
館内にはパンフレットや資料が揃っており、学習目的の来館にも最適です。

四季折々の自然美

払田柵跡は広大な草原と森に囲まれており、季節ごとに異なる表情を見せます。

  • 春:桜や菜の花が咲き、青空とのコントラストが鮮やか。
  • 夏:緑が深まり、青い空と朱の南門が美しく映える。
  • 秋:紅葉と黄金色の田園風景が広がり、撮影スポットとしても人気。
  • 冬:雪に包まれた南門と柵が幻想的な雰囲気を醸し出します。

発掘調査展示エリア

園内には実際の発掘現場を再現した展示コーナーもあり、遺跡がどのように発掘され、保存されてきたかを学ぶことができます。考古学好きには見逃せないスポットです。

周辺観光地

秋田県立博物館(秋田市)

車で約50分。秋田県の自然・歴史・文化を総合的に紹介する博物館。払田柵関連の資料も一部展示されています。

大曲の花火伝統芸術館(大仙市)

車で約15分。全国的に有名な「大曲の花火」をテーマにした資料館。花火の歴史や製作工程を学べる体験型施設です。

角館武家屋敷通り(仙北市)

車で約40分。江戸時代の町並みを残す「みちのくの小京都」。黒板塀と紅葉が美しく、秋の観光に最適です。

田沢湖

車で約50分。日本一深い湖であり、辰子像や御座石神社など観光スポットも多数。自然の美と伝説が交わる場所です。

アクセス方法

  • 車:秋田自動車道「大曲IC」から国道105号・県道11号経由で約15分。
  • 公共交通機関:JR大曲駅から大仙市コミュニティバス「払田柵跡入口」下車、徒歩約10分。
  • 駐車場:普通車25台(無料)。

注意点

  • 史跡内は広大な芝生や未舗装の道が多く、歩きやすい靴での訪問がおすすめです。
  • 冬季は積雪により一部エリアが立ち入り制限される場合があります。
  • 自然保護のため、植物の採取や柵への接触は禁止されています。
  • 案内所の休館日は年末年始(12月29日〜1月3日)となります。

まとめ

払田柵跡は、古代東北の歴史を今に伝える貴重な国指定史跡であり、古代日本の国家形成や文化交流を感じられる場所です。復元された南門や柵群、政庁跡を歩けば、1300年前の人々の息遣いを感じることができます。

また、周辺には角館や田沢湖、大曲花火といった人気観光地も点在しており、秋田観光の歴史コースとして組み合わせるのもおすすめです。静寂な草原と雄大な景観の中で、悠久の時を超える歴史ロマンを体感できる――それが払田柵跡の最大の魅力です。

補足

  • 所在地:秋田県大仙市払田字仲谷地95
  • 開放時間:通年(自由見学)
  • 払田柵総合案内所 開館時間:9:00〜16:30(年末年始休館)
  • 入場料:無料
  • 駐車場:普通車25台(無料)
  • 所要時間:散策約60〜90分